いつになったら大人になれるんだろう
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遥かなる時空の中で4の小話です
那千というか・・・? CPとしては微妙
らなさんは那岐ED糖分少なめだよーって言ってたけど、私的にはそこそこ糖分はいってたような・・・。主にラストのスチルのとことか
那岐は家族愛ですね、たぶん
昔の葦原家とか好きです。家族になりれてなくて、でも一生懸命がんばってる辺りの葦原家が
お題は骸に花さんよりお借りしました
どこか遠くから、幼馴染の声が聞こえる。うとうとと昼寝に勤しんでいた那岐は薄く瞳を開いたけれど、そこに千尋の姿を見つけることは出来なかった。堅庭の隅にこっそりと存在する特等席を、千尋に見つかってしまったのは何日前だったか。
『・・・で、別部隊は俺が指揮を執る。俺たちが敵を足止めしている間に・・・・』
『私たちが背後にまわるんですね』
『そうだ。斥候として日向の一族を何名か派遣しよう』
『だったら人選はサザキに任せましょう・・・』
連れ立って歩いている相手は忍人か。話の内容は今度の戦についてのようだ。最初は疎く、たどたどしかった千尋の返答も、今や忍人と話しを合わせられるほどになってきた。大将としての自覚と責務が、彼女を変化させたのだろう。
どういう作戦を取ろうが、自分には関係がない。言われたことをやりさえすればいいのだ。再び瞳を閉じた那岐の頭上から、おずおずと小さな声が振ってきた。
「・・・・那岐、いる?」
尋ねたくせにこちらが答える暇もなくするすると千尋が降りてきた。以前は枝を利用するという荒業をやっての
けていたが、落ちたら危ないので安全な道を教えた。壁のくぼみから降りてきた千尋は小脇に巻き物を抱えている。目線で問えば、「指南書」と千尋は笑った。
けていたが、落ちたら危ないので安全な道を教えた。壁のくぼみから降りてきた千尋は小脇に巻き物を抱えている。目線で問えば、「指南書」と千尋は笑った。
「岩長姫に借りたの。もっと勉強しなくちゃいけないから」
「ふぅん。試験前に切羽詰って教えてって迫ってきた千尋とは思えないね」
「昔の話でしょ! 今はそんなこと言ってられないもの」
那岐の隣の腰掛けて、千尋は巻き物を開いた。日本人離れした蒼の瞳が懸命に文字を追っている。その姿をなんとなくながめていた那岐は唐突に「疲れない?」と尋ねた。
「そんなに気張って。見ているこっちまで疲れそう」
「もう、那岐はいつもそんなことばっかり言って!」
千尋が目尻を吊り上げて叫ぶが、慣れっこなので気にしない。いつものことなので、千尋が本気で怒っていないということもわかっていた。
「千尋はなんでもかんでも背負いすぎなんだよ」
「だって私は龍神の神子なのだもの。私ががんばらないで、誰ががんばるの?」
「だからって普通前線に出る? 奥に引っ込んでりゃ怪我なんかもしなくてすむのに」
巻き物をめくる千尋の両手に視線を落とす。弓の引きすぎですれた手には包帯が巻いてあった。それほど気にする必要もないらしいのだが、風早を筆頭とする過保護な面々に言いくるめられて念のために巻いたらしい。
弓道部なんて入ってなかったから、弓なんて今まで触ったこともなかっただろうに。布都彦に教わったり自分でも練習したりして、少しづつだが確実に腕を上げている。それは軍を率いるものとして必要なことだ。わかってはいるけれど、那岐はその変化に嫌悪を覚えた。
どんどん変わっていく千尋。常世の国を撃退し、豊葦原を取り戻せば彼女は王となるのだろう。そうしたら、きっとこんな風に言葉を交わすことさえできなくなる。千尋は気にしていないようだが、身分の差というのはとてつもなく深く、広い。
(千尋が変わらなければ、ぼくらはずっとこのままだったのに)
ここではない遠い異界で暮らしていた日々を想う。懐かしくはあるけれど、もう戻れないとわかっていたから。千尋と風早と三人で、家族として暮らした生活を想うだけで。またいつか、なんて夢はみない。
「那岐、那岐。ここがよくわからないんだけど、那岐はわかる?」
閉じていた瞼を開けば、眉を下げて困ったようにこちらを見ている千尋がいる。その指が示している文章は、確かにちょっと難しい一文だ。勉強真っ最中の千尋には少しばかり難易度が高い。
面倒だな、と思う。そう思っているのに、千尋に教えるために身体を起こしている自分がいる。きっと自分たちの関係が変化しようとも、千尋が変わらず那岐と呼ぶ限り、自分はいつだって千尋のそばにいられるのだと、那岐は少しだけ唇の端を吊り上げて微笑んだ。
君と僕、小さな世界の片隅で
(こうしてふたり、いつまでも隠れていようか)
面倒だな、と思う。そう思っているのに、千尋に教えるために身体を起こしている自分がいる。きっと自分たちの関係が変化しようとも、千尋が変わらず那岐と呼ぶ限り、自分はいつだって千尋のそばにいられるのだと、那岐は少しだけ唇の端を吊り上げて微笑んだ。
君と僕、小さな世界の片隅で
(こうしてふたり、いつまでも隠れていようか)
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