いつになったら大人になれるんだろう
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拍手お礼小話を書いていたら出来上がった産物です
お礼としては長すぎるし、かといって普通に載せるには短すぎるのでここに載せておきます
CPはライ刹♀で年齢逆転現代パロです
ライルは小学生の高学年、刹那は・・・・高校生くらい?
題名はララドールさまよりお借りしました
なにかを熱心に見つめているようなその瞳に、何も映っていないのだと気付いたのはいつだっただろうか?
学校からの帰り道。町内でも怖いと有名なセルゲイ家の三軒隣の真っ白な洋館。
その家の二階の窓際にお姫様がいることを知っているのは、きっと俺だけだと思うと、自然と口元が綻ぶ。好奇心旺盛な妹も、いつも一緒に遊んでいる双子の兄も、誰も知らない。
見たこともない褐色の肌に、跳ねた黒髪のお姫様。初めて彼女を見たとき、あまりにも綺麗なのと全く表情を変えないので、きっと人形だと思い込んでしまった。
『人の顔をじろじろ見て。失礼な奴だな』
しゃべった! と騒いだら余計に怒らせてしまった。王子様とお姫様の出会いにしてはあんまりなそれも、俺にとっては輝かしい思い出。
「なぁ、刹那。今日こそ外に出てみないか?」
お決まりの台詞で誘うと、彼女は二階の窓からいつもどおりの無表情で俺を見下ろしながら「行かない」と答えた。その後の言葉だって、きっといつもと同じ。
「この家から出たら、ティエリアに怒られる」
「こっそり帰ってくれば、きっとばれない」
ティエリア、というのは天涯孤独の身である彼女にとって兄のような存在らしい。それゆえ、多少過保護な面も持ち合わせているようだ。
つまらなさそうに空を見上げて、彼女は「行けない」と詠うようにくり返した。
「なぁ、刹那。刹那はどうしたいのさ?」
俺はずっと、刹那に断られるたびに心に浮かんだ疑問を投げかけた。
「外に出るな、はティエリアの意見だろ。刹那は、どうしたい?」
「俺は・・・・・」
赤褐色の綺麗な瞳が、戸惑うようにゆれる。俺より年上なくせに、自分の感情を掴みきれていないその様子は、幼い子供のようだ。
俺は持参したロープの先に小石をくくりつけると、刹那がいる窓辺へと投げ込んだ。刹那にそれを近くの柱にくくりつけてもらい、俺はそれをたどって部屋の中へと侵入する。はい、立派な不法侵入。まぁ、他人の庭に勝手に入った時点で、不法侵入してたわけだけど。
「初めまして、お姫様?」
いたずらっぽく笑いかけると、刹那は目を見開いて硬直してしまった。無表情な彼女が、ここまで感情を表に出すのは珍しい。
「で、刹那はどうしたいの?」
もう一度だけ、先ほどの質問を繰り返す。今の刹那は、まるで迷子の子供のようだ。手を差し出すと、彼女の華奢な肩がびくり、と震えた。
青い青い空に視線をさまよわせて。ひきこもりのお姫様はゆっくりと答えを出した。
手のひらに感じた体温が、きっと彼女なりの答え。
窓辺の姫君を攫ってみないか
(さぁ、この手を取って)
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