いつになったら大人になれるんだろう
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ひたすら胸焼けするような話です。そして相変わらず刹那がやけに男前
そんな感じの、チョコレートにまつわるライ刹
チョコレート出てきてますけど、決してバレンタインデー話でもホワイトデー話でもありませんよ
からころと舌を使って口内で甘ったるい物体を転がす。舐めれば舐めるほど甘みが口いっぱいに広がるそれはミレイナからもらった飴玉で、ポケットの中にはもらった飴玉やチョコレートでいっぱいになっている。欲しそうな顔してたですぅ、と言われてとても恥ずかしかった。そんな顔しているつもりはなかったのに。
男には珍しいかもしれないが、刹那は甘いものが好きだ。子供の頃、どんなに食べたくても食べられなかった反動なのか、いい歳した大人になっても甘味類は好んで食べる。行ったことはないが、実は喫茶店などでパフェなどを食べてみたいと思っている。さすがに男がひとりで注文するには恥ずかしい食べ物なので、今度フェルトかミレイナあたりでも誘って行ってみようか。
口内で飴玉が消えたことを確認すると、刹那はポケットからチョコレートを取り出して口に放り込んだ。でろっと溶け出すカカオの甘みを堪能しながら、収容されている愛機を見上げた。
「せぇーつなっ」
甘ったるい、口内で溶けているチョコレートと同じくらい甘ったるい声が響く。愛情やら恋情やら詰め込めるだけ詰め込んだ、その声だけで胸焼けしそうだ。振り返らなくても誰だかわかったので、刹那は視線をガンダムに固定したまま、二個目のチョコレートを口に運んだ。
「刹那、なにそれ?」
整備でもしていたのか、油まみれのつなぎに油まみれの手袋を装着し手にはスパナを持ったロックオンが、珍しい物でも見るかのようにチョコレートの包み紙を凝視する。
「チョコレート? 刹那、甘い匂いがするぜ」
「ミレイナにもらった」
だから断じて自分から買い求めたわけではない、と言い訳のような台詞をもごもごと口にする。ロックオンが意味ありげにニヤリと笑った、その瞬間刹那は得体の知れない恐怖を感じた。
「それ、俺にもちょーだい?」
「別に構わないが・・・・・」
ポケットからひとつチョコレートを取り出し、ロックオンの手に落とそうとしたところで刹那は止まった。ロックオンの両手は油まみれでとても食品を触っていいものではない。チョコレートは包装紙にくるまれているから直接油に触れるわけではないが、刹那としてはあまりいい気がしない。それよりも問題なのは。
「あれ、くれるんじゃないのか?」
「・・・・・・なにをしている」
不思議そうにロックオンがこちらを見つめるが、それはこっちの態度だ、と刹那は思う。なぜロックオンは手袋を脱がず大口開けて待っているのだろうか。否、なんとなく理由はわからないでもないが、わかりたくないのであえて刹那は尋ねた。
「刹那に食べさせてもらおうと思って」
「死ね」
間髪いれずに氷よりも冷たい視線と言葉を突きつける。しかし入隊当初から頻繁に浴びてきた刹那の罵詈雑言に耐性がついたのか、ロックオンはへらへらと笑ったまま口を閉じようとはしない。
「なんなら口移しでもいいぜ? 刹那の口の中にはまだチョコレートが残っているんだろうし」
最悪の選択だ。何が最悪って、逃げ道が用意されていないところが。どちらかを選ばなければロックオンは延々と自分にチョコレートを強請るのだろうし、もしかしたら実力行使で無理矢理キスされるかもしれない。
(・・・・・本当に、性質が悪い)
チョコレートの包装紙をから茶色い一粒を取り出した刹那はため息をついた。はたして性質が悪いのはどちらだろうか。刹那が断われないと知りつつ、しかしどちらでもいいと選択肢を残すロックオンか。
もしくは、ロックオンの選択肢を選ぶことなく勝手に第三の選択肢を作る自分か。
「ロックオン」
「なに・・・・・んっ」
互いの唇が触れるか触れないかぎりぎり、繋ぐのは小さなチョコレートの粒。舌先でそっとその粒をロックオンの口内に押し込んで、触れることなく刹那は唇を離した。
「甘いだろう?」
翡翠の瞳を丸くして驚いているロックオンを尻目に、刹那はロックオンにあげたチョコレートと同じ味のものを口内に放り込んだ。
甘いのどっち?
(チョコレートか、それとも俺たちか)
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