2011/06/22 (Wed) よんでますよ、イザヤさん

題名で察してください


デュラララの『よんでますよ、アザゼルさん』パロです。配役としては臨也、静雄、青葉、ろっちー→悪魔、帝人→芥辺さん、杏里→さくまさん、正臣→光太郎、な感じです。しかし帝人受けという鉄則


オールギャグ、キャラ崩壊、鬼畜帝人＆ドＳ杏里、グロい、いつも以上に不憫な臨也などが嫌な方はブラウザバックをお勧めします


ちなみに長くなったので続きますよー

私は大学二年生になるのですが、高校の時からの友達と一緒に小さいながらも会社を経営しています。探偵、といえば聞こえはいいのですが、漫画の世界ではあるまいし、主な仕事は浮気調査やペット探しなど地味なものばかりです。とはいえそれなりに需要はあるうえに学業の合間にやっているので、いつだって事務所は仕事であふれています。学生三人ではとてもじゃないですが、手が回りません。そのため、所長である竜ヶ峰くんが素敵な奴隷お手伝いさんたちを呼んできてくれました。


薄汚れたビルの二階と三階を借りて私たちは事務所を営んでいます。二階が依頼人と会ったり書類を片付けたりする仕事場ですが、三階は違います。ここは社員以外立ち入り禁止、大家さんにだってバレてはいけない秘密の場所なんです。



あの悪魔(へんたい) さんたちを呼び出す、秘密の作業場です。






「おはよう、園原さん」


いつもの時間より少し遅れて、所長である竜ヶ峰帝人くんが事務所にやってきました。高校生の頃から全く変わらないその童顔さのせいでなにかと依頼人にナメられ気味ですが、彼はとても優秀な所長さんであり、一流の悪魔使いです。私も彼のもとで修業を積んでいますが、いまだ足元にも及びません。


「おはようございます、竜ヶ峰くん。なにかあったんですか？　竜ヶ峰くんが遅れてくるんなんて」


「うん、実はこれを買ってこないといけなくなって・・・・ごめんね、遅くなっちゃって」


そう言って竜ヶ峰くんが鞄から取り出したのは、最新機種のiP●oneです。まだ箱から出してもいないぴかぴかの新品です。ですが、私の記憶が正しければ、竜ヶ峰くんはすでにiP●oneを持っていたはずです。


「イザヤさん用の生贄なんだ・・・・・悪魔のくせにiP●oneが欲しいとか、ほんとなんなんだろうねあの
悪魔(ひと) 」


なにって、悪魔なんだと思います。


悪魔を召喚するにあたって生贄はとても重要です。悪魔を呼び出す才能、正確な魔法陣、その悪魔の取扱説明書にあたる魔道書(グリモア) 、そして生贄がなければ悪魔を呼び出すことはできません。とは言っても、呼び出すことだけなら、生贄なしでもできます。というか、素人さんが行うミスのほとんどが生贄に関するミスです。魔道書(グリモア)をよく読んでいなかったりもしくは読めていなかったりして、その悪魔が望んでいる生贄とは違うものを捧げてしまったりすると大変なことになります。魔道書(グリモア)の ルールは悪魔にとっても人間にとっても絶対です。私は以前、そのルールを破ったがゆえに自我を奪われテントウムシになってしまった人を見たことがあります。


ですのでいくらイザヤさんに対して傍若無人を地でいく竜ヶ峰くんも、きちんと生贄を用意しないといけないのです。私やもうひとりの社員もここは徹底しています。生贄は悪魔によってまちまちですが、何を要求されようともたいていは経費で落ちるので問題はありません。私が普段お呼びする悪魔さんはそんなに高価な生贄(もの) を要求しませんし。


「作業場に行くんでしたら私も用があるので、一緒に行きますよ」


私は慌てて備え付けの簡易冷蔵庫から用意していた生贄を取り出すと、竜ヶ峰くんの後に続きます。いかにも怪しげな見ためな魔道書(グリモア)でいっぱいの本棚やおどろおどろしい書体で描かれた魔法陣などがある作業場には鍵が掛かっていて、所長である竜ヶ峰くんから鍵を借りないと入れない仕組みになっています。警察に通報されでもしたらことですし、万が一魔道書(グリモア)を盗まれでもしたら大変なことになるからです。


「　　　　　　　　　　　　　　」


手早く魔法陣を描いた竜ヶ峰くんが、普通の人間には発音できない、それなりの才能と修業を積まなければ読むことすらできない呪文をなめらかに唱えていきます。その姿は神秘的でいかにも悪魔使いといった感じですが、座卓の上に置かれたiP●oneがその雰囲気を台無しにしています。これで生肉とかだったら本当に雰囲気が出たのですが。


「　　　　　　　　　　　　　　」


竜ヶ峰くんが最後の一行を唱え終わると、魔法陣が淡く輝き始め―――中央にひとつの小柄な影が出現しました。真っ黒な服装と髪の中で唯一赤い目だけがひどくまがまがしいけれど、幼稚園児と同じくらいかすこし小さい程度の、二頭身に縮小された人間といった感じでなんだかやけに可愛らしくなってしまっているその人影こそ、『傲慢』を司る悪魔イザヤさんです。見ためはミニマムで可愛らしいのですが、中身はとんだ変態です。


イザヤさん曰く、実際はこんな威厳もなにもないちんちくりんな姿ではないそうです。実はこの建物全体に帝人くんが結界を張っているので、この建物内で召喚された悪魔さんたちは問答無用で力とか威厳とかプライドとかなくしちゃあいけない大切なものを奪われてしまうのです。


「やっほー、帝人くん。生贄はちゃんと用意してくれた？」


「ええ、ほら、あそこにちゃんとあるでしょう？　大変だったんですよ、用意するの。高いし、最新機種なんて人気があるから手に入れにくいし」


「チッ、そのまま諦めて魔道書(グリモア)に意識奪われちゃえばいいのに。そうしたら俺が帝人くんをお着替えさせたりいじくったりいろんなことしちゃえるのに」


大変腹黒い顔で舌打ちしましたよ、この生き物。どうやらこれが本音のようです。このように、どれだけ愛らしい外見をしていようとも、所詮は悪魔なのです。


「イザヤさん、生贄もちゃんと用意しましたので働いてくださいね。今なら先ほどの不愉快極まる発言も聞かなかったことにしてあげますから」


「えぇー、仕事ってあの厚化粧のおばさんの見張りでしょ？　嫌だよ、そんなの。どうせ眺めるんだったら帝人くんの着替えとかお風呂とかにしたいよ！」


『傲慢』であるイザヤさんは人を見下すことが大好きで、それゆえに他者の行動を盗み見ることができます。色々発動条件の多い能力ですが、使いようによってはプライバシーの侵害もいいとこです。案の定というか当然というか、はぁはぁと息を荒げるイザヤさんのキモさに竜ヶ峰くんがキレました。


彼が音速の速さで取り出したのはイザヤさんの魔道書(グリモア)。ちょっと小さい図鑑のようなそれを思いっきり真上に振り上げ、そのままイザヤさんの脳天めがけて降りおろしました。すると、



イザヤさんが爆発しました。



頭蓋骨がはじけ飛び、中の脳髄やら血液やらがあたりに飛散しました。彼の胴体は千切れ、臓物と血液と他の体液が床や壁を汚します。眼球がごろりと眼孔から転がり出て、ぷちっと帝人くんの皮靴に踏まれて潰されました。


語るのも悲惨な状態ですが、悪魔であるイザヤさんはこの程度では死にません。なぜ彼がこんな状態になったかというと、別に竜ヶ峰くんの腕力がものすごいわけではありません。彼の握力は平均にも満たない程度なのですから、こんな惨劇を起こせるはずがありません。


魔道書(グリモア) のルールのひとつに、悪魔は魔道書(グリモア)に触れられない、というのがあります。自分のはもちろん、他の悪魔の魔道書(グリモア)に触った瞬間、どういう原理かは知りませんが、超常現象的な罰が与えられます。たいていは原型がなくなる程度に身体が爆発します。悲惨ですし、なにより飛び散った臓物や血痕を掃除するのが恐ろしく面倒なので、できれば別な方法で同じくらい痛い目にあってほしいものです。


不死というわけではないのですが、悪魔であるイザヤさんはこの程度では死なないので、数分すると自力で復活します。その間に私は魔道書(グリモア)とにらめっこしながら、魔法陣を描いていきます。


そういえば以前あまりにもイザヤさんのセクハラが気持ち悪かったので、私はなんでここまで執拗にセクハラするんだろうと気になって調べたことがありました。すると、『色欲』を司る悪魔がいるということを知りました。イザヤさんが『色欲』を司る悪魔ならあの何度身体を爆発されてもやめない身体を張ったというか学習能力のなさが浮き彫りになるセクハラも仕方ないのかもしれない、と竜ヶ峰くんに言ったところ、


『え、違うよ、イザヤさんは『色欲』じゃなくて『傲慢』を司る悪魔だよ』


つまりあのセクハラは彼の趣味だということらしいです。